ふくよかな気配

蔵ではたらくのは、人間だけではない。
ながく棲みつく微生物たち。姿は、見えない。もの音ひとつたてないけれど、そばにいる。やわらかくつつむ、幸福な気配たち。
蔵人と杜氏と、微生物と。
どのいのちが欠けても、酒はつくれない。

  • 蔵に立ち、耳をすます。きのう仕込みをした樽からは、糀のつぶやき。
    水が流れる、火がおこる。それから湯気が噴き、米のあまい香りが満ちる。
    蔵人たちは、まなじりあつめて時をはかる。

  • そうして、神々の息が、ひとつになる。
    八百万の力をあつめた米は、
    湯気と光をほのぼの放ち、ほほえむ。
  • 祝うこころ、
    祈るこころ。
    力がわきあがる