米に触れる

金寶桜は、蔵のできた年に植えられた。
枝垂れの大木で仕込みを終えたころに咲く。たくさんのひとが集い、花見をたのしむ。
樹齢三百余年、江戸正徳の世。
いつか、みんなで愛でる日のために。
見あげるたび、植えたひとの手を思う。

  • 蔵のなかには、最新鋭の機械がたくさんある。
    温度、湿度をはじめ、酒づくりの詳細がたしかな数字にあらわれる。
    杜氏と蔵人は、これらの数値情報を共有して、日々の作業をすすめる。

  • いっぽう、収穫された自然米には、数値にあらわれない情報がみっしりつまっている。
    手のひらに、米をのせる。
    匂いを嗅ぎ、ひと粒のすがたに目をこらす。
  • いまもむかしも、杜氏は五感をとぎすまし、米に触れる。
    そのたびに、むかしのひとの知恵に学ぶ。はるかな時の流れが、全身に満ちてくる。
    ひとすじの道に、ともにならんでいる。