三百年のことづて

春と夏と、秋と冬。目をとじ、耳をすまし、毎日、三六五の水をきく。
雪の香り、新緑の山道、いつかの景色を、水も見ていた。
その澄んだひと雫が、ふるさとの酒になる。

  • 山道にはいると、息が深くなる。
    どんぐり、もみじ、栗の木、山の桜。
    子どものころとおなじ場所で、花を咲かせ、実をつけている。

  • 山には、けっして手をつけぬこと。
    その教えを守り、受けついできた。
    この山にゆたかに湧く水で、酒をつくりつづけてきた。
  • 水は、大地からのたより。
    雨の多い年、雪の深い年もある。
    よろこびのあふれる年、しんどい年もある。
  • 三百年かわらぬ山と水は、
    百年さきもそのままにあるように。
    たちどまり、むかしのままの山を見わたす。