仁井田本家は農薬や化学肥料を一切使わない自然米で仕込んだ酒造りをしています。蔵のある福島県郡山市田村町金沢は、字のごとく田んぼの町。金沢という地名は、一説には稲穂が金色に輝いて見えたことが由来だと言われています。さらに中硬水と軟水の2種類の天然水が採取できる珍しい土地でもありました。しかし、慣行栽培が土壌や生態系に与える影響は非常に大きいもの。この豊かな自然の循環を守っていくための最初の一歩として、2003年から自分たちで自然栽培の米づくりを始めました。
蔵人総出で夏は米づくりを、冬は自分たちの米で自然酒造りを行っています。農作業が始まるのは毎年4月。田んぼに水を張れるように畦の亀裂や穴を修繕する「くろぬり」や堀の掃除をし、5月下旬からはハウスで育てた苗の田植えを行います。雑草が生えにくくなるようにわざと水田の水位を維持するなどの自然栽培ならではの工夫を施し、9月下旬から10月上旬にかけて刈り取りを済ませます。そして来年のために種籾を確保し、稲藁・籾殻・畔の草などの田んぼから採れた物だけを栄養として田んぼにかえしてあげる。米づくりには八十八もの手間がかかると言われているように、仁井田本家では人の手で自然に沿った米づくりを毎年続けています。