仁井田本家の創業は1711年(正徳元年)。田村町の豊かな自然とともに、十八代にわたって代々酒造りが行われてきました。1967年に日本初の「自然酒」を発売し、創業300年を迎えた2011年には自然派の酒蔵として300年前の製法に戻って土壌の特徴を映す自然酒を追究していくことを宣言し、日本初の100%自然米、100%純米造りの「全量自然米蔵」となりました。

「日本酒の製造方法って江戸時代に既に確立されているんです。顕微鏡もないし、発酵のメカニズムもわからないのに、江戸時代の人は五感を頼りにこうすればこうなるという製法を確立していました。江戸時代以降の酒造りというのは、いかに簡単に、短い時間で、再現性を上げるということを研究してきた歴史なんです。だからひょっとすると、菌との距離感や自分の感覚という点において、僕らは進化ではなく退化してきたのかもしれない。300年前の酒造りに立ち返り、僕らが忘れてしまっていたものを取り戻せたら、現代の醸造法では到達できないほどのおいしいお酒ができるかもしれない。僕はそこにロマンを感じています」(十八代蔵元・仁井田穏彦)